堀内徹夫

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予算案・関連議案についての反対討論

予算議会, 議会報告

 私は、日本共産党市議団を代表して、本議会に上程されております諸議案のうち、議案第26号ないし29号、33号、35号、36号、38号ないし42号、44号ないし46号、48号、51号、53号、56号ないし68号および74号ないし77号について反対し、討論を行います。
 議案第26号についてわが党は、コロナが長期化するなかでとりわけ経済的困窮に陥っている子育て世帯に対する支援につながる、学校給食費の負担軽減に絞って予算の組替えを市長に対して求める動議を、条例予算特別委員会で提案いたしました。政治的立場の違いを超えて取り組むよう呼びかけましたが、残念ながら多数の同意を得られませんでした。
 従いまして、ここでは市長が提案した原案について取り上げます。わが党の意見につきましては、代表質疑および補足質疑、分科会審査ならびに総会における質疑で述べていますので、ここではその基本点について述べます。

 先日3月22日に成立した国の2022年度予算は、新型コロナウイルス感染拡大への対策が全く不十分である上に、社会保障と暮らしの予算を削減する一方で、大軍拡を進めるという、国民には冷たく危険な予算となっています。ワクチンの3回目接種は遅れに遅れ、検査も不十分なまま、コロナでの死者数は過去最悪です。急性期病床は全国で2846も削減され、保健所体制の強化も図ろうとせず、小学校休業等対応助成金や事業復活支援金などの支援策も不十分で使い勝手が悪いものになっています。
 このような岸田政権の悪政に対して、「住民の福祉の増進を図る」ことを基本とする自治体こそ、市民の命と暮らしを守る防波堤となるべきです。しかし、市長の新年度予算案は、国いいなりに社会保障の削減など暮らしを支える予算を削る一方、ムダな大型開発や呼び込みについては相変わらず熱心であり、不十分なものであると言わざるを得ません。

 第一に、大型開発と呼び込み施策についてです。
ウォーターフロント地区の再整備については、クルーズ船が寄港する見込みもないまま、中央ふ頭基部の開発に着手しようとし、さらに財界に新たな絵を描かせて拡大を目論んでいます。
「天神ビッグバン」「博多コネクティッド」については、多額の税金投入、特定企業への不当な優遇などを行い地価の暴騰、住民や中小業者の追い出し、渋滞・ラッシュ・災害混乱などのインフラのパンクを引き起こし、市民や零細企業には何の恩恵もありません。
人工島の土地処分については、立地交付金というプレゼントをつけた上に、原価割れで叩き売りをして最大421億円の大赤字を残す見込みになっています。このような破綻した事業に新年度は60億円以上もの税金を注ぎ込もうとしています。
市長が九州大学箱崎キャンパス跡地で推進しようとしている「FUKUOKA Smart EAST」は、民間サウンディングを活用し、財界に好き勝手にデザインをさせています。この計画はAIやビッグデータ等の最先端技術を使って個人情報を勝手に利用する住民監視のまちづくりに他なりませんが、引き続き推進を図っています。
呼び込み施策について、世界水泳選手権福岡大会はコロナ感染の収束が見通せない中、開催すべきではないという市民やわが党の意見を無視し、開催強行に突き進んできました。その結果、大会費用を当初の90億円から180億円へと2倍に膨れ上がらせ、現在まで87億円もの税金を投入しています。コロナ感染拡大のもと、来年の開催もできるかどうか不透明な中、今年2月の補正予算では、基金への積み立てを行うとして42億円の増額補正を行い、その上新年度予算案で約20億円をつぎ込むのはとんでもないことです。
G 7サミットは、誘致した場合、本市にも莫大な財政負担が求められるのは明らかであり、コロナ収束の見通しが立たない中で、海外からどんどん福岡に来てくれと手を振るなど無謀だと言えます。
これら不要不急の事業をそのままにしておいて、「コロナ対策を最優先にして市民の命とくらしを守る」という今自治体がなすべき最も喫緊の課題に真剣に取り組んでいるとは、到底言えないことは明らかであります。

第二に、ケアや社会保障についてです。
 コロナ対応について、市としてワクチンの3回目接種の遅れを打開し、いつでも誰でも身近なところで無料のPCR検査が受けられるようにすべきであると求めましたが、髙島市長は全く応じませんでした。また、いざという時に必要な医療が受けられない、無症状・軽症感染者の「原則自宅療養」方針の撤回について国に求めようともせず、臨時の大規模医療施設も計画せず、保健所の人員体制の抜本強化にも背を向けるなど、市の姿勢は全くコロナ対策最優先になっていません。
国民健康保険について、市長は今年度、史上最高の保険料を被保険者に押しつけているにもかかわらず、新年度の保険料については、一般会計からの法定外繰入を3.5億円も減らし、介護分だけのわずかな引下げにとどめており、コロナ禍のもとで極めて不十分です。子どもの均等割については国の一部軽減措置で良しとせず、第一子から全額免除すべきだと求めましたが、市長は冷たく拒否しました。滞納者への保険証取上げ、短期証への切替えや問答無用の差押えについては引き続き進めることを明言しました。このような血も涙もないやり方は断じて許されません。
 介護保険については、史上最高額となっている介護保険料について、今期途中でも引き下げる手立てをとるとともに、昨年8月から強行された施設利用者への「補足給付」の要件改悪により対象から漏れた利用者に、当面市として負担増の補填をするべきだと求めましたが、髙島市長は一切応じませんでした。また、全産業平均より月10万円低いとされる介護職員の低処遇を解決するためにも、市独自の補助を行うべきだと求めましたが、これも拒否をしました。
 生活保護については、自民党政権が強行してきた生活保護基準の連続引下げにより食事は1日2食、子どもの服が買えないなど、生存権さえ否定される事態が常態化しているにもかかわらず、わが党の質問に対して、髙島市長はこの水準を「適切に定められた」などと答弁しました。市独自の下水道料金減免、夏季・年末見舞金の復活も行わないなど、あまりにも冷たい態度です。保護申請をためらわせる要因となっている親族等への扶養照会や就労の強要、資産調査についても、継続する意向を見せました。
障害児施策について、医療的ケア児が特別支援学校に入学した際の保護者の付き添いの強制、療育センターや児童発達支援事業所において療育時間が短いなど、障害児・医療的ケア児の保護者が働きたくても働けない状況がつくられています。
高齢者施策について、加齢性難聴によって認知症悪化や社会参加の妨げとなることなどが指摘されており、補聴器購入費の補助を求める声は切実です。わが党は補足質疑で他都市にならい、障害認定のない高齢の難聴者などへの補助制度をつくるべきだと求めましたが、市は冷たく拒否しました。
住宅政策については、市営住宅の応募倍率は高止まりしており住宅セーフティネット施策も全く不十分であり、家賃補助物件はわずか10戸です。髙島市長は「住宅は今後余るのだから民間市場に任せておけばいい」ということを市長選挙でも公言してきましたが、そうした姿勢が住宅政策の貧困として如実に現れたものです。
保育については、昨年10月1日時点で未入所児童数は1465人にのぼるにも関わらず、新年度、市は認可保育園を一切新築せず、増改築でたった100人分しか整備しないことが審議で明らかになりました。また、保育士の賃金は全産業平均より月7〜8万円近く低い状況となっています。このような中、政府が行う月額9000円の賃金引上げでは到底足りず、市独自に手立てをとり大幅に賃金を引き上げることを求めましたが、市長は応じませんでした。
 国が予算をつけている、学童保育支援員の月額約9000円の賃上げを、「留守家庭子ども会支援員の給与は適正な水準になっている」等の理由で実施しないことは許されません。あくまで活用を拒否する市の姿勢の根底には、ケア労働は女性でもできるものだというジェンダー差別があり、支援員の仕事を「下」にみる差別意識があると断じざるを得ません。
このように、コロナによって、新自由主義的な政策がいかにケアや社会保障を粗末にしてきたかがはっきりしてきたにも関わらず、髙島市長の新年度予算案はその路線を何ら反省せず、同じ道を暴走し続けています。

第三に、中小企業施策と地域経済についてです。
コロナ禍で髙島市長が推進している企業の呼び込みやインバウンドの推進など、外需頼みの経済政策が成り立たなくなっているなか、内需の拡大、とりわけ中小零細事業者の支援に思い切って力を集中した経済政策が必要です。しかし、中小企業振興予算は少ないままであります。さらに、コロナで苦しむ中小企業に向けて政府が用意した「事業復活支援金」の支給額は「持続化給付金」の半分に過ぎず、わが党は市としてその上乗せ・横出しと、市独自の家賃支援金の復活など直接支援を求めましたが、いずれもまるでやる気がありません。地域経済を活性化する一番の施策は消費税の減税と中小企業支援とをセットにした最低賃金時給1500円の引上げなど賃上げ政策です。しかし髙島市長は消費税は社会保障財源であると減税を否定されました。最低賃金の引上げも国が決めることであると消極的な態度をとっています。
 経済波及効果の高い住宅リフォーム助成や、わが党が補足質疑で取り上げた、脱炭素への転換にもつながる、省エネ効果の高い断熱住宅リフォームへの助成なども拒否しています。また、市が発注した工事や仕事で働く労働者に十分な賃金を保証する「公契約条例」については「国がやること」だと後ろ向きの姿勢を示し続けており、市長は、コロナをきっかけに地域循環型の経済へと発展させることなどは全く頭にないようです。

 第四に、教育についてです。
 コロナ禍のもとで暫定実施されてきた小中学校全学年での35人以下学級が新年度より本格実施される運びとなりました。しかし、教員不足が深刻であり、教員の長時間・過重労働が常態化しています。わが党はこの解決のために、総会質疑で正規教員の大幅採用増を求めましたが、「市独自に非常勤講師を増やして対応する」等とごまかし、問題解決に背を向けました。
 教室不足など教育環境が劣悪となっている市内の過大規模校の多くは、抜本的な対策を取ることなく放置された状態です。髙島市長が都市開発ばかりを考え、いきすぎた呼び込みを進めたことが原因ですが、市長は全く反省をしていません。新たな過大規模校をつくらないためのマンション開発規制にもまるで取り組む姿勢がなく、行き当たりばったりの対応を続ける始末です。
 教育環境の整備も喫緊の課題であり、築30年以上経過しても未だに大規模改造に着手していない学校が残されています。また、教室があるフロアにトイレがひとつも無い学校もあります。学校の改修ペースを抜本的に引き上げるべきですが、市は重い腰を上げようとせず、許されません。

第五に、気候危機打開についてです。
 政府は2050年に温室効果ガス排出ゼロを目指していますが、本市はそれよりも10年早く達成しなければなりません。しかし、市の脱炭素計画を見ると、目標を達成するための具体的な施策は見受けられず、中間目標も設定されていません。わが党は補足質疑で具体策や中間目標がない髙島市政の脱炭素計画の見直しを求めましたが、髙島市長は計画策定中だと述べるにとどまり、具体策や中間目標については沈黙しました。中間目標も決めておらず、何をどう、いつまでやるのかも全く見えてこない。まさに「やっているポーズだけ」と言われても仕方がなく、新年度予算案は、市が掲げる目標に到底見合うものになっていないと言わざるを得ません。

 第六に、ジェンダー平等についてです。
 市長が市政運営方針でジェンダーについていっさい語らないなか、市役所における女性管理職比率は16%、市の審議会等委員への女性の参画率は35%ほどであり、あまりにも低い状況です。管理職への登用の強化、昇任などの差別を一掃する手立てをとり、女性比率を大幅に引上げることを提起しましたが、髙島市長は明言しませんでした。男女間の賃金格差是正についても具体策が一切示されず、「国がやること」であると責任を放棄しています。また、わが党は補足質疑で、性暴力や性被害から子どもたちを守るために、性交や避妊・中絶およびLGBTQ+などについて教えることを含めた包括的性教育を行うよう求めましたが、頑なにこれを拒否しました。
 先日3月23日、厚生労働省が「生理の貧困」について初めて実態調査を公表し、深刻な実態が明らかになっています。わが党は昨年9月議会で、生理用品を学校や公共施設に常設し、経済的な理由だけではなく、羞恥心や生理をタブー視することによって生理に関する知識や生理用品にアクセスできない人、性自認は男性であっても身体機能が女性の人なども存在するなかで、ジェンダー平等の立場から幅広い視点で、一過性ではない恒常的な対策をとるべきだと求めましたが、市長は一切言及しませんでした。

第七に、まちづくりについてです。
 髙島市長は市政運営方針において露骨に自助・共助を目玉にした「見守り、支え合う、共創の地域づくり」を打ち出し、今議会に「共創による地域コミュニティ活性化条例案」を提出していますが、この条例案の第4条で「市民の役割」が定められ、市民は町内会などの地域活動への参加に「努める」とされています。また、第5条では「町内会等の役割」が定められ、その活動内容や運営のあり方を示して、努力義務を課しています。これらの条項により、住民が町内会への参加を現場で押しつけられたり、町内会の活動や運営を縛ったりするものとして機能する懸念があり、問題です。
 コロナ禍での災害避難において、避難者のソーシャル・ディスタンスやプライバシー確保のために一時および指定避難所を抜本的に増設することが必要ですが、依然少ないままとなっています。他市で行なっているようにホテルや旅館に避難した際に宿泊費を補助すべきですが、市長は補助するとは明言しませんでした。また、障害者や高齢者など「避難行動要支援者名簿」にもとづく個別避難計画は未だ5%しか作成されておらず、地域に丸投げされて事実上放置されていることは許されません。
 公有地等の跡地利用について、九州大学箱崎キャンパス跡地については市長が「尊重する」と言ったキャンパス周辺の4校区が長年にわたって、住民の要望をまとめた「4校区提案」の方向性や精神を踏まえ防災公園をつくり、地元住民から請願も出されている元寇防塁を歴史遺跡として保存・整備すべきだと求めましたが、市長は明言を避けました。こども病院跡地の民間売却、冷泉小学校跡地へのホテル建設計画など、住民の声を聞かない公有地等の跡地利用は許されるものではありません。

第八に、市政運営およびその他の問題についてです。
本市はコロナでの10万円の特別給付金事業で、委託先のパソナがやるべき業務に市職員を大量に動員し、住民監査請求も行われ、「事務処理上の不備が多く、市の契約行為に関する意識が著しく低い」という厳しい意見が監査委員から出されました。また、再委託や労働者賃金の中抜きも行われており、このような大企業への大規模業務委託は縮小・廃止し、労働者の適切な賃金や待遇を保障する直接雇用に転換するべきです。しかし、髙島市長は全く反省をせず、監査委員の厳しい指摘についても顧みる気配がありません。
 今年2月4日に発表された、植木剪定と除草の業務委託で発覚した不正問題では、市は関わった業者について、競争入札指名停止もしくは警告という処分にしましたが、まだ全容もわからない中で業者への処分を早々に決定したことは、早期に幕引きを図ろうとするあまりにも甘い処分であると言わざるを得ません。この問題では処分公表前に、会員のほとんどが不正に関わっていた福岡市造園建設業協会の会長が副市長と面談していたことが明らかになっており、市長も、自身のパーティー券を買ってもらった人の中に、今回不正に関与した企業がいないとは明言せず、政治倫理条例に基づいて自ら事実関係を明らかにすることをやっていません。この問題は明らかに意図的に行われた公金詐取であり、刑法246条の詐欺罪として刑事告発すべきですが、市は民事上の違反に過ぎないかのようにかばい続けています。
 平和施策についても、昨年、世界の圧倒的多数の政府と市民社会が共同し核兵器禁止条約が発効し、同条約への日本政府の批准を市長が直接国に求めることや非核自治体宣言を行うことをわが党として提案しましたが、市長は応じようとしませんでした。市民から本市議会に3万筆を超える署名が提出された平和資料館の設置についても、既存の展示などで十分だとする姿勢に終始しました。

このように、多くの点にわたって述べてきましたが、市民の立場から見て問題の多い予算案と関連諸議案に、わが党として賛成することはできません。

以上でわが党の反対討論を終わります。

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